第5章 「すれ違い」
僅かな、声でそう言ったのだ。
そして、彼女は俺から離れた。
剣を抜き取った。
大量出血だ……。
だけど、助からない……。
俺は、茫然としていた。
彼女は、苦痛な顔を浮かべていたにも関わらず……。
今まで見たこともない笑顔を俺に、見せてくれた。
また、茫然としてしまった。
彼女は、谷底の方へ歩き出した。
その時、俺は我に返った。
ま、まさか!?
彼女の身体が、谷底へと傾いて、俺の方を向いた。
そして……。
『…瀞哉さん…。私は…。今、気づきました…。私の…本当…の…。気持ちを…私は…。貴方が大好きです…。…さようなら…。そして…。』
俺は、彼女に向かって手を伸ばすが……間に合わない。
彼女は、微笑みながら……最後の言葉を言った。
声にならないが、死神の能力を使って……。
『…生き…て…。くだ…さい…。私…の…分…まで…。』
そう言って、彼女は谷底に落ちていった。
俺は、その場で膝をついてしまった。
闇璃の大鎌は、消えてしまった。
……闇璃が死んだと悟ったのだ。
『…っ…うっ…。』
最後に言った彼女の言葉が、まだ宙に漂っていた。
これが、彼女の最後の願い……。
俺は、久しぶりにその日は、大泣きをした。
森は、既に俺を見守ってくれた。
そう感じたのだ……。
俺は、剣を取ろうとした時……。
彼女の着けていた、ブレスレットがあった。
いつも、死神の時彼女が、身に着けていた物だった。
俺は、それを取って……。
自分の家に目指した。
~???~
ある人物は、椅子に座っていた。
そして……舌打ちをした。
『チッ、梁沢闇璃が死んだか…。あの役たたず目が…。だが…あいつも…。もう時期死ぬ…。』
そう言って、席に立った。
部屋に残っているのは……紫の文字が宙に漂っていた事……。
~あれから、一週間~
闇璃が死んで、一週間が経った。
俺は、今あの谷底にいる……。
別に自殺するわけでも、ない……。
闇璃の墓参りみたいなものだ。
拓弥は、あれから俺を毎日心配してくれている。
俺は、何度も大丈夫だ、と伝えていた。
闇璃は……。
何故だか、行方不明になっているみたいだ。