第1章 「噂」
『なんだよ…これ…。』
見たこともない道具があちこちにあった。
俺は、父さんに聞いた。
『父さん…。これは…何?』
父さんは、頷いた。
『これは…俺も死神と戦う前に、修行していた場所だ。』
父さんが、修行していた場所?
俺も、ここで修行しなければいけないのか?
それに…命がけの戦い。
………。
死神を倒さないと…。
皆の命が危ない。
俺が、皆を守らないと…。
俺は、ゆったりと口を開いた。
『俺…死神と戦う!』
父さんは、頷いた。
そして…。
『修行は、厳しいからな。』
俺は、頷いた。
その時……。
脳裏に、闇璃のあの笑顔が浮かんだ。
そうだ…。
彼女も、守らないと…。
父さんは…。
『とりあえず…。リビングに戻るか。』
俺は、頷きリビングに戻った。
母さんは、夕食の準備がちょうど終わった。
『瀞哉、お父さん…できたわよ。』
俺は、席に座った。
食べながら、頭の中でいろいろ考えてしまった。
闇璃に初めて会った事など…。
また…彼女の事を考えてしまった。
すると…母さんが…。
『どうしたの?瀞哉?』
『…いや。なんでもない。』
母さんは、何かわかったかのように頷き言った。
『瀞哉。あなた、恋に落ちたの?』
『はぁっ!?』
持っていた箸を思わず落としてしまった。
恋?
魚じゃなくて…。
恋愛の!?
思わず焦っていた。
『か、母さん。考えすぎだよ…。』
母さんは、首を左右に振っていた。
『いいえ。あなたは、恋に落ちましたよ。いつもの瀞哉じゃないよ?』
『うっ……。』
確かに、母さんの言った通りだ。
今日…いつもの俺じゃない。
彼女に…会ってからは…。
母さんは、クスクスと笑っていた。
『好きな、女の子が見つかったの?』
俺は、思わず黙ってしまった。
母さんの言った通り…俺は……。
彼女の事、好きになってしまった。
『…。恐らくね…。彼女に会ってから、おかしくなったな…。』
父さんが言った。
『それは、一目惚れだな…。』
……。
まさか…父さんにも言われるなんて…。
ついていないな……。
俺は、思わず席を立った。
『お、俺…部屋に戻る…。』
母さん達は、お互いに笑っていた。
俺は、この空気に耐えられなかった。