第1章 「噂」
「違います。俺は、闇璃とは付き合ってはいません。」
俺は、はっきりと言った。
先輩は、ガッカリとした顔をしてしまった。
恐らく、期待していたのだろう。
思わず、舌打ちをする先輩。
「チッ…。付き合ってないのかよ。つまらないな~。」
「何が、つまらないですか!こっちは、焦りましたよ。」
先輩は、笑いながら謝っていた。
……本当に、焦った。
でも、それが本当だったら…。
って!
俺は、何を考えているんだ!!
今は、部活だ!!
気持ちを入れ替えないと……。
俺は、息を吐いて竹刀を取った。
時間は、あっという間だった。
俺は、深く息を吐いた。
そして…。
「先輩、今日はありがとうございました!」
と先輩に言って、部室を出た。
着替えて、帰る準備も終わり、家に帰ろうとした時…。
ふと、足を止めた。
俺は、いつの間にか目線は、弓道場の方に向いていた。
彼女が、気になって仕方なかった。
……やっぱり、俺は…。
とりあえず、弓道場へ。
~弓道場~
俺は、弓道場に入って周りを見回した。
闇璃が、どこにいるのか確認したかったからだ。
すると…。
「瀞哉さん…?」
彼女がいた。
彼女は、不思議そうな顔をしていた。
当たり前だ、剣道部の俺が弓道場にいるからだ。
俺は、焦った。
理由も分からないままこっちに来てしまったからだ。
「えっ…えっと…。ぶ、部活…頑張ってるかな~って思って来たんだ。」
はっと思いついた事を言った。
これじゃ、怪しまれる……。
彼女は、微笑んで言った。
「はい、頑張っていますよ。瀞哉さんは、これからお帰りですか?」
頷く。
「じゃ、少し待っててもらえますか?私も、そろそろ帰るところなので……。」
また、頷く。
闇璃は、微笑んだ。
彼女は、荷物置き場に向かった。
……っ!?
い、一緒に帰るのか!?
さらに、焦った。
ついさっき、先輩の言葉を否定したけど…。
絶対、見られたら…や、ヤバい……。
どうする?
彼女と一緒に帰る事を、断るしかないのか…。
そうしたら、彼女が可哀想だ……。
今の俺じゃ…断れない。
ダメだ、彼女の事を考えると…おかしくなる…。
溜め息をした。