第2章 本末転倒
――翌日、エルヴィンがいつものように団長執務室で
仕事をしていると、扉がノックされ「入れ」と声を掛けた。
何人かの部下がやってきて、頬を紅潮させながら
「エルヴィン団長、お誕生日おめでとうございます!」と言われ、
目を丸くする。
・・・そう言えば、今日は私の誕生日だったか・・・・
部下達にお礼を言って下がらせると、
エルヴィンは背凭れに体重を乗せ天を仰いだ。
毎年つい自分の誕生日など忘れてしまうが、
去年もこんな事があったなぁと苦笑する。
去年も自分は部下にプレゼントを渡されるまで気づかなくて、
隣でナナシがその姿を見ていたっけ・・・と考えた所で
ハッとした。
そうだ!もしかしたら、今年もナナシからプレゼントを
貰えるかもしれない!!
ナナシはとても律儀で義理堅くて優しいから、
きっと何かを用意してくれているはず・・・っ!!
エルヴィンはそう思い立つと、ナナシを探しに執務室を飛び出した。
だが、どこを探しても見つからず、部下達にその所在を
聞いて回ったが、指し示してくれた場所にはもうナナシは
居らず、道行く部下達から貰うプレゼントのお陰で
抱えきれない程になった為、諦めて執務室に戻ることにした。