第3章 夜這い
「勿論、努力はするよ。でも、いつも君は嫌がってばかりだから、
どれが建前でどれが本音なのか判断しかねる場合がある。
君の事を考えてそれを判断するから安心しなさい」
「・・・・・・・」
「私は来年生きていられるかわからない。そして来年には
君はいない。私は誕生日に愛する者と互いを求め合ったという
思い出が欲しいだけなんだ。私は君に置いて行かれてしまう
・・・そんな俺を哀れだと思うならば、君の慈悲をくれないか?」
エルヴィンは尚も迷っているナナシの耳元で囁くように
ダメ押しするのを忘れない。
このように言えば、エルヴィンに対する負い目で
ナナシが断りにくくなる事はわかっていた。
だから、エルヴィンはナナシの罪悪感を擽るように刺激し、
自らの意志で自分の元へ落ちてくるように仕向ける。
「・・・・わかった。だが、酷い事だけはしないでくれ・・・」
「ありがとう、ナナシ。君は本当に優しいね」
ナナシが恥ずかしそうに目を逸らしている陰で
エルヴィンは口角を上げ、目に獰猛な肉食獣の色を宿した。