第8章 それぞれの片想い
【沖田side】
『おきた?…』
「…なんだよ」
目を見開いて吉野は俺を見上げる
『さっきの…全部見てた?』
「…まあな」
休憩室に連れて行こうと吉野の手を掴んだとき彼女は急いで手を払いのけ逃げ出した
「あ、コラ待ちやがれ!」
しばらく鬼ごっこが続く
『やだ、来ないで!』
「待てって!」
『イヤッ!』
俺は彼女の手を掴み、壁に追いつめ逃げ道を塞ぐ
『沖田には関係ない!!』
「散々人の名前出してたくせによく言うぜィ」
そう言うと吉野は俺から視線を逸らし下を向く
好き放題言いやがって…俺の気持ちも知らねェくせに。
「俺がお前のこと何とも思ってねーだ?」
わからせてやらァ
「オレは…俺は…」
今日こそ
「俺はお前がすっ………え?」
パッと吉野の顔を上げると気持ち良さそうに寝息を立てている
…寝てる?え、まじか。
この女…まじでムカつく…!
このタイミングとかありえねーだろィ!
叩き起こしてやる!っと思った瞬間
『お…きた……』
「!!」
無防備な面しやがって…。
俺は溜息をついて静かに眠る吉野を抱き上げた
「ほんと…めんどくせェ女…」
ま、振り回されねェほどには付き合ってやらァ。
そしていつか必ず…。