第5章 自覚と苦悩
「どーゆうつもりでィ」
「……」
『ち、違うの沖田!私が変なこと言っちゃったからそれでッ!』
「いいのよ」
『!!』
「ごめんなさい桜ちゃん。私が悪かったわ」
『美々ちゃん…』
すると突然沖田の携帯が鳴った
「近藤さんからでィ、ちょっと出てくらァ」
そう言って沖田は一旦その場から去って行った
私と美々ちゃんの間に気まずい空気が流れる
『あの…』
私が言いかけた時、美々ちゃんは少し大きめの声で言った
「桜ちゃん…これだけは覚えておいて。世の中には上手くいかないこともあるの、どんなに頑張ったって出来ないこともあるの。桜ちゃんだって、一生懸命やってても思い通りになんてならないでしょう?」
それって…沖田のこと?
「結局はそう…。あなたはそういう運命なの、誰しも運命には逆らえない。だから…」
そう言って美々ちゃんは真っ直ぐ私の目を見つめた
「どうせ運命が決まっているなら…いっそのこと諦めたほうがいいわ」
私の中に何かが走った
『…それって…』
「…頬、ごめんね。あと…」
"無事でよかった"
それだけ言うと美々ちゃんはその場を去って行った
私はただその場に立ち尽くすことしか出来なかった
しばらくすると電話を終えた沖田が戻ってきた
「吉野、みんなもう病院の外にいるらしいぜィ」
『そっか…』
「…山本は?」
『あ…何か先にみんなのとこ行っちゃったみたい…』
沖田はふーんと言って私の顔をじっと見てきた
『な、なに…』
「お前その頬…」
あ、さっきの!
『あ、こ、これは…さっき壁にぶつかっちゃって…』
なんとか誤魔化そうとして言った言葉に沖田は眉間に皺を寄せて「はぁ?」と首を傾げた
『でも大丈夫!ほっといたら治るし!』
沖田は溜息をつくと、私の手を握りそのまま歩き始めた
「病室戻るぜィ」
『えっ!!』
「冷やさねェと…腫れてんだろうが」
『そ、そうだけれども!!』
ちょちょちょっっ!アレ?…私今…
沖田と手繋いでるんですけどおおおお!!
突然のことで私は体中の熱が一気に顔に集まるのを感じた
そういえば今まで私の方から抱きつこうとしたり、沖田に触れようとしたことは何回もあったけど
沖田からこうして触れられるのは初めてかもしれない…。