第2章 メロキフィストという少女
美女の名前はメロキフィスト。
とあるトリックスターの遺伝子操作によってサタンの血を濃く継承した。
彼女は、サタンの弟子兼秘書として力の鍛錬に励んでいる。
サタンを書斎に戻すことも、秘書としての仕事の1つである。
ぶつくさと不平を呟く師匠兼上司を書斎に引き戻すと、メロキフィストは冷たく言い放った。
「ルシファー姐さん。美男、美女と遊んでる暇があるなら仕事してください。本当に男か女か分かんないですね…。」
男も女も狂わせるサタンの魅力は
その中性的で秀麗な顔立ちなのか、
溢れ出るカリスマ性なのか、
堕天使で悪魔王という肩書きなのか、
メロキフィストには理解ができない。
前述した通り、メロキフィストはサタンの血を濃く継承している。つまり、サタンと同等のポテンシャルを持っていると考えられる。
同等の力を持つものを崇拝なんてしない。
それが、メロキフィストがサタンの魅力を理解できない理由だ。
サタンは気怠げに言葉を紡いだ。
「メロキフィスト、"ルシファー"と呼ばないでくれよ。それは昔の名前だよ。」
少しだけ嫌そうに、美しい顔を歪めた。
「ルシファー姐さんが嫌がるってことを承知で昔の名前で呼んでますから。」
メロキフィストは口の端を釣り上げ、ニヤリと意地悪な笑みを作った。
全く…、と言うように苦笑したサタンは、諦めたように羽根ペンを握り、インクを着け書類にサインを書き始めた。
その姿を確認したメロキフィストは静かに書斎を後にした。