第3章 夢見たこと
自室に入ったゼヴィウスは、緊張の緩みや、本を無事持ち帰ったことの嬉しさから、顔がにやけていた。ようやく、顔の緩みが収まったところで、手の中の本を見つめた。さっきの浮つい気持ちは何処へやら、罪悪感が心のうちに湧き上がってきた。息がしづらくなることを感じながら動けなかった。
「よう、ゼヴィウス!お目当てはその本だったのか?」
急にエリエルの声が聞こえた。反射的に、本は自らの手によって閉じられた。顔を上げ、猛獣を警戒する小動物のように部屋中を見回す。すると、さっき会った時と同じような笑いを顔に乗せたエリエルが、ベッドに座っていた。
「うるせぇ、悪いかよ。」
ゼヴィウスはバツが悪そうに呟き、下を向いた。靴が擦れる音が聞こえ、その音が止まったと思えば、目線の先にエリエルが愛用している革靴があらわれた。どうせ、人を小馬鹿にしたような笑いを顔に乗せているんだと思い、ゼヴィウスは顔を上げた。だか、ゼヴィウスの予想に反した顔をエリエルはしていた。そして、心配そうに言った。
「おい、そう邪険にするな。お前がミカエル様の本を盗んだことを黙ってやってるんだ。これで共犯だろ?」
ニッカリと笑うエリエルを見て、ゼヴィウスは気持ちが落ち着いていくのを感じた。その落ち着きは、共犯者という秘密の共有者がいるからだろうか。ゼヴィウスの罪悪感は息を潜め始めた。