第51章 アポロジャイズフォーミー
爆豪勝己は、ゆっくりと目を閉じた。
もはやここまでだ、一滴の汗もでなければ
自分の個性など無個性と大差ない。
無個性ってこんな感じかと、どこか他人事のように考える。
『勝己…!!!』
彼女の声が聞こえた気がした
愛しい女の声が
(幻聴まで聞こえんのかよ……すげぇな。走馬灯ってのは)
呼ばれた気がして、咄嗟に開けた瞳
目を開くと寧々の幻覚さえ見えて
思わず笑ってしまった。
どんだけ好きなんだよ。
いや、知ってたな…ずっと好きだった。
頭がおかしくなっちまうくらいに
とんでもなく好きだったんだ。
なんでこいつ泣いてんだ?
せめて笑っててくれよ……
俺の都合よく見させてくれる幻覚なら、
俺は寧々の笑った顔が好きなんだよ…
────ドン!
突然体が、何かに突き飛ばされたように尻餅をつく。
そのおかげもあって、龍の鼻先が爆豪を掠めた。
事態が飲み込めず、慌てて体を起こすと
臭ったのは濃い鉄の香り、
目の前にこぼれ落ちた多量の血……