第49章 ドントストップミー
あまりに話せない日々が続き、その原因もわからないまま
もう明日にはインターン先に向かわなくてはいけなかなってしまっていた。
「寧々」
だがこのまま何週間も離れるわけにはいかないと、爆豪は寧々と会話を試みたのだが…
寧々は名前を呼ばれ、振り返ることなくただ立ち止まる。
立ち止まったことを後悔しているのか、今更、聞こえないフリをしようとしているのか…
どちらにせよ、寧々は今この瞬間をどう切り抜けるか、そのことに頭を悩ませて居た。
「なんで避けてんだ…」
じりっと近寄るたび、寧々も一歩距離を取る
爆豪から得た心の傷は思ったより深く、
だからといって、爆豪に非があるとも思えない。
結局、自分が悪いのだ…
ヒーローになりたくない。自己犠牲の精神の全くない自分自身が…
けれど、中学生の爆豪が言った言葉を本人が知れば、寧々に申し訳なさを感じるだろう。
寧々はその事を一番に避けたかった。
だから、爆豪との対話を避け続けて居たのだと、今になって思う。
寧々は徐々に縮まる距離に焦りが生まれて居た。
「寧々…?」
なぜここまで避けられているのか
わからない爆豪が、寧々を呼ぶ。
『…近寄らないで!』
背を向けたまま、寧々の声が廊下に小さく響いた。
「……は」
爆豪は、突然の拒絶の言葉に足を止める。
『話す事…無いから……』
寧々はそう言い捨てて、走り出した。
結局、一度も2人の視線が通うことはなく
インターン前の最後の日は終わりを向けたのだった。