第49章 ドントストップミー
身を沈めると何とも他の何でも得がたい快感が胸を包む。
自慰もそこまで経験が無いが、寧々を抱くのとでは雲泥の差がある。
すっぽり腕におさまってしまう寧々は、小さく声をあげながら俺の動きに合わせて揺さぶられている。
さっきまでキツイ布に押し込まれていた胸は、今は縛るものなどなく、たゆんたゆんと跳ねていて
それがたまらなく背徳的に俺を煽った。
長い睫毛が涙を滲ませる。
唇を寄せると、塩の味がした。
(しょっぺぇな…)
なのに、抱きしめるとなんとも言えない甘い香りがするし、
歯に触れる肉は柔らかくてたまらない。
なんでこんなに白いんだ…?
どこもかしこも細いくせに柔らかくて…
柔らかい肉肌に手全体がもっちりと包まれる。
布団ともちがう、ねっとりとした温かさ…なのに表面はサラサラとして肌触りがいい。
体の至る部分がそうだ。
どこに手を這わせても、そんな上質な温もりに包まれると、ついワガママを言いたくなる。
この温もりで、優しさで…すべてを包んでくれるんじゃないか?
そう思ってしまう…
「寧々…、俺を…選んでほしい」
性行為の途中に聞くのは、ずるいだろうか…。
そう思ったが、覆水盆に返らずで
寧々は驚き見開いた目をゆっくりとこちらに向けた。
「爆豪に、絶望したなら
俺を…俺だけを、見てくれねぇか」
きゅう…と音がした気がした。
と同時にユラリユラリと寧々の瞳に水溜りのような膜が張っていく。
その膜はギリギリで留まって、溢れることも無かった。
『そうしたら、楽になれるのかな…』
『焦凍を選んだら…もう、こんなに苦しくない?』
ぎゅう、と押さえつける手が、胸に沈んでいく。
「…いや
多分…ならねぇ、と、思う…」
答えた後に、自分の頬に涙がこぼれるのを感じた。
「わりぃ…今のは忘れてくれ…」
自分でも、本当に、勝手なお願いをしていると思う。
それでも、寧々は受け入れてくれるのだから…
甘えてしまう。
最低だ
ーーー最低だ