第45章 メイズミー
ラムは、プロデューサーやディレクターの飲みに誘われ大満足だった。
飲みの席でも、寧々と爆豪、轟の三角関係について何度も何度も語ってみせる。
大人たちは宥めるようにラムを褒め称えた。
満足したラムを、タクシーに乗せ、手を振り見送る。
「やー強烈ですね、最近の子は」
アシスタントディレクターの男が溜息を吐きながらタクシーのテールランプを見つめた。
「最近の子…ってよりはアノ子が特別に強烈なんだよ」
プロデューサーがタバコに火をつけ、吐き出した煙が夜空に浮かび、溶けていく。
「口付寧々がヒーローになれば、番組持たせたいっすねー
数字バンバン上がりそう」
「だな、ニュースでさえこの数字叩き出したんだ。
あの子には才能っつーかオーラみたいなもんがあんだよ」
「だからこそ、スキャンダルは何としてでも揉み消さないと…ですね」
ディレクターは顎に手を当て、考える。
ラムがSNSなどを使って、自発的にあのスキャンダル写真を発信してしまおうものなら、いくらメディアの力を持ってしても隠蔽は難しい。
だが、次世代のアイドルヒーロー…ウワバミに続く女性ウケも高いヒーローになり得そうなのは、雄英体育祭を見る限り口付寧々くらいしか望み薄だ。
「男ウケだけで言えば居たんだけどなー」
「あー、そっすねー
ミッドナイトとか、マウントレディ系の…」
「女ウケするモデル、女優、ヒーローってのはなかなか出たかねぇもんなんだよ。
でも、今の時代チャンネル主導権は女が強しってな。
口付寧々みたいな女ウケも男ウケも良さそうなタイプには、表出てきて愛想振りまいて貰わねーと」
「それを、本人が望んでなくても…ってことっすか?」
「そーゆーこと」
輝く表舞台には、必ず影がある。
影の泥水を吸って、踏んづけあった先に、成り立つ世界。
「あの、探出ラムって女は
おだてりゃ、股でも何でも開くだろ。
でもあんな女抱いたところで、だ。
腐る程いる、あんなやつ
どうにか、煽てて機嫌良くして、あいつの持ってるデータ全部処分しろ。」
プロデューサーの男は、タバコの吸殻を道に捨てながら口角を上げる。
「リョーカイっす」
三人の男たちの下品な笑いは夜道にやけに響いた。