第45章 メイズミー
寮を抜けて少し走ったところで、
「寧々」
と呼び止められて振り返った。
『しょ…と……』
視界がボヤけてうまく見えないけれど、そこに居たのは見間違えようのない赤白の髪色…。
泣き顔を見られたくなくて、顔を背けた。
『なん…で、ここに居るの……』
顔を隠していると、焦凍が腕を掴んで持ち上げた。
「…やっぱりか」
『やっぱり…?』
「アラタが、寮を追い出されるかもしれねぇから気をつけろって…」
焦凍は少し悔しそうな顔をする。
『そっか…アラタが…』
なんとなく納得がいって、私は涙を拭う。
『みんなのこと…傷つけちゃった……』
「傷ついたのは寧々だろ…」
『そうなのかな…
ううん…違うと思う…いや、わかんない…
私…傷ついたのかな…』
轟は涙を流す寧々の頬を掴むと、両手で持ち上げてそっとオデコにキスを落とした。
触れるだけのキスは、寧々を泣かせるのに充分な優しさで、
寧々は堰を切ったように泣き続け、
轟はただ黙って寧々を抱きしめて頭を撫でてやる。
寧々が泣き終わると、轟は寧々の手を引いて歩き始めた。
「帰ろう、俺たちの部屋だ」
『でも……また迷惑かけちゃう…』
寧々はゴシゴシ、と服の袖で目を拭う。
『それに…お洋服これしか持って来てない…』
「俺のがある。気にするな」
轟は、でも…とまだ悩もうとする寧々を
もう一度抱きしめて黙らせた。
「いいから、体も冷えてんだろ
帰ろう」
『うん……うん……』
寧々は何度もうなづいて、轟の腕にすがりつく
轟は久しぶりに心の中が満たされるような気がして
(お前が泣いてんのに…喜んで…最低だな、俺は…)
何度も心の中で謝った。