第39章 コンビニエントフォーミー2
廊下に突然現れた学ランに
普通科生徒は驚いていた。
何より、さきとゆきに挟まれて歩いていた寧々が一番
目の前にいる人物に驚いていた。
「え?あれって…爆豪…」
ざわつく周りの声など聞こえていないのか
目を釣り上げた男は寧々の方にまっすぐ歩くと
ガッと肩を掴んだ。
「テメェの個性はなんだ」
『…え?』
「テメェの個性はなんだって聞いてんだ!
【魅了】でも【催眠】でもねぇってんなら、何で俺が…」
そこまで言って、爆豪はもう一度寧々を睨みつける
「何で俺が、お前ごときのモブ女…」
「ちょっと!」と爆豪を剥がそうとするさきを手で止めて
寧々は困ったように爆豪を見つめる。
『場所、変えていいかな…
少し目立ってるから…』
「え…寧々大丈夫?」と心配するゆきに『大丈夫だよ』と返事をして
寧々は爆豪を連れて、校舎裏に向かった。
『ここならいいかな』
誰も周りにいない事を確認して、寧々は爆豪に向き直る。
『あれだよね…えっと
2年後の勝己が私のことを好きになった理由が知りたいんだよね』
「……ぁあ
てめぇの【個性】のせいだって言ってただろ」
『そうだね
えっと、私の個性…【洗脳】なんだ』
笑顔を顔に貼り付けて、寧々は飄々と答える。
「チッ…やっぱりそっち系か…
クソデクの野郎、【催眠】でも近けぇじゃねぇか
あいつら笑いやがって…」
『…私、勝己のことが好きだったから
個性使って好きになってもらってたの…ごめんね』
スラスラと出てくる嘘、でも嘘じゃない…
個性(キスミー)をつかって好きになって貰ったんだから
頭はどこか冷静で、心操に心の中でゴメンね、と謝る。
(すこし、個性名借りるね)
『でも、もう諦めるから、安心してね
勝己の体に戻ったらちゃんと別れるから』
「たりめーだ!
…ったく、タチ悪りぃ」
唾を吐き捨てる爆豪に、寧々はチクリと心が痛む
『じゃあ、私はこれで』
個性の嘘がバレる前に立ち去ろうとした時、
腕を掴まれ立ち止まる。
『な、ナニ…?』
「あ?何逃げたんだ
解除しろよ」
『…へ?』
「だから、今かけてる催眠、解除しろバカ女」