第37章 ファイトミー
保健室に横たわる二人
カーテンで仕切られた二人のあいだに立ち
ため息をつくリカバリーガールのインカムが鳴る
「なんだい?またかい…
こっちにはもうベットがないよ
わかった、そっちに行くさね」
終業のチャイムを聞きながらリカバリーガールは答える
救急箱を手に、保健室を後にしようとした時
ドアの前に立つ少女とぶつかりかけ
そのクリクリとした目が大きく開いた
『ごめんなさい!リカバリーガール』
「あぁ、寧々かい、2人なら寝てるよ
まったく、今年のヒーロー科はどうなってるんだか
中で待ってていいよ」
『あ、はい…』
寧々は少し不安そうに目を泳がせたが、頷づき
廊下の奥に消えていくリカバリーガールを見つめた後
寧々は保健室のドアの奥に入って行った。
カーテンを開くと、最初に目に入ったのは勝己
どこもかしこもボロボロで
回復に時間がかかりそう
『勝己…』
もう治癒はされているんだろう。
小さい傷は治りつつある。
スマホに八百万さんから来ていた連絡は
【爆豪さんと轟さんが
演習で戦って大怪我されましたの
保健室にいらっしゃいますわ。】
と、それだけ。
ほかの情報はないけれど体育祭と同じようなことが起きたのだろうと容易に想像は付いた。
勝己のカーテンを閉めて、もうひとつのカーテンに手をかけ
1つ、呼吸を深くした
何日あっていないんだろう…?
彼にこれだけ合わないのは初めてかもしれない。
顔を見るのが怖い…
手をかけたカーテンをぎゅっと握る
やっぱこのまま帰ってしまおうか
会いたくない
会って、自分がどう思うのか、考えるだけで怖い
そう思う寧々の気持ちを
汲み取ったかのように
カーテンは、軽い音を立てて開いた。