第37章 ファイトミー
かっちゃん…君は、なんてものを付けてるんだ…!!!!
そう思ったのは多分僕だけじゃないと思う。
午後の実技演習、
男子更衣室で、みんなの視線はかっちゃんの上半身に注がれていた。
いや前々から、爪痕はかっちゃんと、轟くんの背中に残ってたことはよくあったし
それにはもう慣れてたんだけど
「なあ…緑谷、あれって…」
切島くんが僕にヒソっと聞いてくる。
「へ!?あ、うん…///
やっぱ、そうだよね…」
ヒーロースーツで隠れない肩に残る、歯型
鎖骨の上の、キスマーク
付けたであろう女の子の顔を思い出すが
到底そんなものを付けそうなタイプではない。
清楚で大人しそうな、ほわほわした雰囲気の女の子だ。
轟くんの方を盗み見るけれど、運良く見てないみたいだ。
ほっと胸をなでおろす。
「よかった…」
何があったのかわからないけれど、最近の轟くんは荒れている。
かっちゃんは寧々さんのところに入り浸ってるみたいだし
もしかしたら、寧々ちゃんはかっちゃんを選んだのかもしれない…
轟くんに、これ以上傷ついて欲しくない。
そう願っていたのに…
「はい、じゃあ今日は対人戦闘訓練だ
最初の二人は…
轟、爆豪
準備できたら訓練場βに移動しろ」
相澤先生の言葉に、何人か頭を抱える。
僕もそのひとりだ。
轟くんは、うっすらとクマを浮かべた瞳を、かっちゃんに向ける
かっちゃんはあえて見ないようにまっすぐ扉に向かっていく。
二人がいなくなったあと、
モニタールームには、僕達のざわめきだけが残った。