第36章 プルミー
『んんっ』
溢れた声が、勝己の口内に包まれてくぐもっている。
こんな感じだったっけ?
誰かに愛されるのって
まるで、鍋に湧く水みたいに
小さな気泡が湧き上がっていく
フツフツと
まだ小さいけれど、
鍋底から上がっていく。
きっと止めることは出来ない
『あぁ…』
持ち上げられた胸元に、勝己の舌が這う。
優しく抱かないで
もうめちゃくちゃに壊して
あなただけのものにして下さい。
そう思った時に
まぶたの裏に、焦凍が現れた
嫌…こわい
あんな事をされても
あなたを忘れられないでいる私が怖い
自分が怖い。
普通じゃない
狂ってる。
いつから?
ずっと前から
なのに、気づかないまま…
止まれないまま
ここまできてしまっていた。
『勝己…もっと…』
私の欲望に、答えてくれるようにお腹を伝って、
好いところに指が這わされる
『あっ♡…かつき…』
名前を呼んでいないと
思考を持っていかれてしまいそう
私が抱かれているのは勝己だと
確かめるように髪をぐしゃっと掴んだ
つんつんした犬毛
赤い瞳
強い、甘い香り。
アーモンドみたいな
私は、今、あなたのことだけ考えたい。
自分がおかしいことに気付きたくない。
どっちも欲しくないなんて嘘…
グチュグチュと中を漁られると、
沸騰していくみたいに、私の中が熱くなる。
「寧々…俺を見ろ」
『かつ…きぃ…』
全部、分かってるんだろうね
勝己、全部わかってても尚、私のことを好きでいてくれるのは…
私があなたの探してた女だから?
引っ込みがつかなくなったから?
それとも…
だめ、思考がまとまらない
自分の喘ぎ声が
脳に響いてウルサイの
『も…いれて、ほしい…』
空っぽの私を埋めてほしい
あなたに、
埋めてもらえたら
何も無い私にならないですむから