第34章 ゲットミー
体にシーツと、勝己の香りだけを纏って
シーツに沈み込む
優しく抱かれたはずなのに
足腰はガクガクだし
ふと、勝己を見ると、左頬にかすり傷が出来ていて
そっと指で触れてみた
『怪我してる…』
「仮免講習でやった」
ムスッとした表情で勝己が言うから、
まだ仮免がスタートした頃に、手当をしたことを思い出す
『毎度、激しめだね』
「今回はそうでもねーよ」
はぁ…と溜息をつき、勝己は何かを思い出しているみたい
その横顔がなぜかとても穏やかに見えて
私はクスクスと笑った
「何笑ってんだ」
『いや、なんか嬉しそうだなぁって』
頬を引っ張られながら、そう言うと
勝己は、バツが悪そうに視線をはずす
本人はどう思ってるのか知らないけれど
最近勝己と焦凍は仲が良くなったと思う
ずっとそのままでいて欲しいって
私が願うのはお門違いなんだろうな
うとうと落ちてきた瞼の裏でそんなことを考える。
ベッドの隅で、スマホが鳴っている
少しして止まった音とともに
私は眠りについた。
眠る寧々の隣で、爆豪もウトウトしていた
そこにスマホのバイブレーションが鳴り響き
目をつむったまま手に取り応答する
「……寧々?」
電話口で男の声がして目を開く
そして呼ばれた名前を考えれば
この手の中のスマホは自分のものではなく寧々のものだと容易に想像がついた。
故意ではないとはいえ、人のスマホに応答してしまったことを後悔しつつ
なんと返事をしようか、寧々を起こそうか悩んでいると
「あー、もしかして
寧々寝てる?
君どっち?」
つかみ所のない声から、この電話の主が
この間いた優男風の男だとわかった
確か名前は……
「煙火アラタ…」
「おぉ、フルネーム
有名人に覚えてもらえてて嬉しいよ」
からかうような口ぶりに、小さく舌打ちをする
「まぁ、いいや
えっと、多分爆豪くんの方かな?
君と話すのも悪くないよね」
「あ゛?俺はお前と慣れ合う気はねぇ」
寧々を起こさないように低く唸る
「えーいいじゃんー」
「つーか、ただの幼馴染の分際で
寧々にこんな時間に電話かけやがって…舐めとんのか」