【YOI男主】僕のスーパーヒーロー【勇利&ユーリ】
第4章 僕のスーパーヒーロー
謹慎が解けたユーリはリンクでは基礎練を、それ以外では主に筋力や体幹を中心としたトレーニングを行うようになった。
プログラムの練習も、無理に通しでやろうとはせず、1つ1つの要素を成長した自分の身体に合わせながら滑っていく。
今の自分がすべき事をハッキリと認識したユーリだったが、やはりそれでも成長期によるコントロールは容易ではなく、プログラム後半のコンビネーションジャンプで回り切る事が出来ず、受け身を取りながらもリンクに尻餅をついた。
「へっ、ザマァねぇな。ここ数日リンクで顔見ねえから、てっきり尻尾巻いてモスクワへ逃げ帰ったのかと思ったぜ」
そんなユーリの横を、先日もユーリにちょっかいをかけてきた選手が通り過ぎる。
しかし、そんな彼を一瞥したユーリは口元を不敵に笑みの形にすると、次のように言い返した。
「シーズン終わっても俺が今みたいにグダグダしてたら、そん時はお前のそのきったねぇ靴で俺の頭、踏みつけていいぞ」
「なっ…」
迷いのなくなったユーリの眼力に怖気づいたその選手は、舌打ちするとその場を逃げるように離れる。
「──『ヒーロー』が、こんなとこでくたばってらんねぇだろ」
口中で呟いたユーリは、パタパタと腰を叩きながら身を起こした。
週末の午前中。
本来練習は休みなのだが、ユーリは僅かに逸る気持ちを抑えながら、それでも足取りは軽やかにサブリンクのドアを開けた。
「おはようユリオ。ごめんね、折角の休みなのに」
「別に。あ、遊ぶって約束しただろ」
先にリンクで準備をしていた勇利に微笑みかけられて、ユーリは仄かに顔を赤くさせると、自分も支度をする。
あの夜以来、リンクでは時々すれ違う程度で互いに試合を控えているのもあり、満足に言葉も交わしていなかった。
しかし、謹慎中に日本の純から無事に退院した知らせを受けたユーリは、久々に彼と話をすると同時に、これまで半ば音信不通にしていた事を何度も謝罪された。
「ホンマに堪忍な。ユリオ君が苦しんでたのに、僕は…」
「いいんだ。あの時の俺じゃ、絶対サユリに甘えちまってた。だから、これで良かったんだ」
そして、かつて長谷津で聞いていた話を直接勇利から伝えたられた事をユーリが打ち明けると、純は「そうか」と心底嬉しそうに返してきたのだ。