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【YOI男主】僕のスーパーヒーロー【勇利&ユーリ】

第4章 僕のスーパーヒーロー


「ユリオが僕を競技の世界に引き止めてくれたから、僕はその後の全日本で純とも再会して、今のような関係を築く事が出来た。今、僕がここでスケートを続けているのは、君がいたからでもあるんだ」
肩を震わせてただただしゃくり上げているユーリを、勇利はゆっくりと立ち上がらせる。
「これまで何百回何千回どころじゃ済まない位やってきた事を、いきなり全然出来なくなるだなんて、逆にそっちの方が有り得ないよ。でも、今日はこれ以上やっても疲れるだけだから帰ろう?」
鼻を啜りながら頷いたユーリを見て、勇利はリンクサイドにあったユーリの荷物からブレードカバーを見つけると、彼に手渡した。
「…『アリガトウ』」
「『どういたしまして』」
「カツ丼。あのな、俺…」
「うん?」
「俺、本当は前からカツ丼の…」
そう言い募ろうとした所で、ユーリと勇利は互いの腹の虫が、盛大に鳴るのが聞こえて来た。
「……」
「あ…そういえば僕夕飯まだだったんだ。ユリオもだよね?」
照れ笑いと共に尋ねてくる勇利に、ユーリは顔を羞恥で染めながら首肯する。
「じゃあ、着替えや片付けが済んだら、僕と一緒にご飯食べに行こう。今夜は、何でもユリオの好きなものご馳走するから」
「でも俺、今食事管理うるさく言われてるから…」
「ダイエットなら、伊達にユリオより場数踏んでないよ?実は、純がオフシーズンのピーテルに来てた時に、2人で周辺の食べ物屋さんのリサーチしてたんだ。だから、その辺は心配しなくても大丈夫」
「サユリとか?」
「うん。僕も純も食べるの大好きだから。どうせ頑張るなら、出来るだけ楽しくやりたいじゃない?」
そう勇利に笑いかけられて、ユーリもつられてやっと笑みを零した。

その後、リンクのスタッフ経由で事情を知ったヤコフから、電話越しに大説教と2日間の謹慎を言い渡されたユーリだったが、不思議とその心は落ち着いていた。
勇利曰く「純の一押し」という店で久々に食事を楽しみ、やがて食後のミニデザートと紅茶を摂っていると、勇利から声を掛けられた。
「謹慎が解けたら、僕とリンクで遊ばない?」
「…遊ぶ?」
「そう、ただ遊ぶの。1時間位でいいから都合がついたら知らせて」
勇利の穏やかな焦げ茶の双眸に見つめられて、ユーリは僅かに胸を躍らせながらも、戸惑いがちに肯定の返事をした。
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