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【YOI男主】僕のスーパーヒーロー【勇利&ユーリ】

第3章 不安と焦りとパンドラの匣


「俺と勇利が純の手術を知ってたのは、アイツが今季勇利のEXを手掛けている振付師でもあるからだよ」
ただならぬユーリの様子に、ヴィクトルが諌めにかかった。
「俺とは違った角度から、勇利をサポートするアイツのスケジュールを把握するのも、勇利のコーチである俺の役目だ。確かにユリオもオフシーズンにアイツの世話になったかも知れないけど、まずは自分の事に専念すべきだろう?」
「でも、俺だってサユリが…!」
「今のユリオに、アイツの心配する暇なんかあるのかい?現役のユリオともう引退したアイツとじゃ立場が違うって、判らない訳じゃないよね」
「ぐ…」
「それに、あまりこういう事は言いたくないけど…お前にかけられた国やその他の様々な期待と引き換えにしてまで、優先すべき事じゃない。アイツもそれを判ってるから、ユリオには敢えて知らせなかったんだ」
僅かに声を潜めたヴィクトルのロシア語に、ユーリは歯を食いしばる。
「さ、練習再開だよ。勇利、もう一度ジャンプのチェックするからね」
ユーリに背を向けたヴィクトルに、何処か気まずい思いを抱えながら続こうとした勇利の耳を、今まで聞いたことのない声が届いた。
「そうやっていつも、お前らは俺の事…お前ら…お前にとって俺は…!」
「ユリオ…?」
「……『僕ハ、のけもノ…ナノ、か』?」
「!」
初めて聞くようなか細い声で囁かれた日本語に、勇利が弾かれたように振り返るも、ユーリは俯いたままリンクの反対側へと行ってしまった。
一瞬だけユーリの顔が泣きそうな程歪んでいたようにも思えたが、勇利にはただ、その頼りなげな背中を見送る事しか出来なかった。

「この頃のユーリは、随分と大人になったわ。反面これまでの良い意味での傍若無人ぶりが鳴りを潜めたり、心身のバランスが崩れたりで、色々と戸惑っているようね」
何度か目をこすった後で基礎練習に入ったユーリを眺めながら、リリアが硬い声で呟く。
「その原因の1つは、この間のショーでユーリのプロを作ったカツキの同期の上林純だ。アイツなら…」
「今のユーリに、彼の優しさはためにならないわ。ユーリ自身が強く生まれ変わるしかないのよ。私達はそれを信じるだけ」
リリアはヤコフにそう返すと、ユーリと勇利を交互に見比べた後で小さく息を吐いた。
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