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【YOI男主】僕のスーパーヒーロー【勇利&ユーリ】

第3章 不安と焦りとパンドラの匣


「やめろと言ったのが聞こえんのか、ユーリ!判ったらさっさとリンクから出ろ!」
まさかあの練習嫌いにこのような事を言う日が来るとは、と内心思いながらも、明らかにオーバーワークを超えているのに練習をやめようとしないユーリを、ヤコフは周囲に人がいるのも構わず怒鳴り飛ばした。
大勢の前で叱責されたユーリは、怒りに顔を歪めながらも渋々言う通りにする。
リンクサイドのベンチに疲労し切った身体を下ろすと、頭を苛立たしげに掻き毟った。
頭から被ったタオルの隙間からリンクを眺めると、そこではプログラムの確認をしている勇利の姿があった。
こうして近くで過ごしている内に、勇利がただの気弱な青年などではない事を、ユーリは嫌という程思い知らされていた。
ヴィクトルや純によって本来の力を遺憾なく発揮できるようになっただけでなく、この所では時折ヴィクトルすら脅かすのではないかという威厳のようなものも感じられるからだ。
勇利のGPSの試合はもう少し先だが、きっと昨シーズン以上に会場を沸かす事が出来るだろう。
一方、自分はどうだ。
(こんな無様な俺は、もうアイツの目には映ってないのかな…)
見守っているヴィクトルや、その他遠巻きに眺めている他のスケーター達の視線も気付かない程集中している勇利を、ユーリはどこか遠い存在のように感じていた。

その後ユーリは一度もリンクに戻る事はなく、陸上で軽いクールダウンだけ済ませると、重い足取りで更衣室へ向かった。
自分の服が入ったロッカーを開けて着替えようとしていた所に、別の選手達の話が聞こえて来る。
「あれ、お前今日これで上がるの?夜レッスンだって言ってなかった?」
「コーチの都合でドタキャン。折角苦労して夜間の貸切時間確保したのに、とんだ骨折り損だよ」
その言葉を耳にしたユーリは、気が付くと彼らの元へと足を進めていた。

夜。
練習を終えた勇利は、これからヤコフとロシアのスケ連関係の会食に行くというヴィクトルと一旦分かれると、ギオルギー達に誘われて夕食に出かけようとしていた。
「そういえば、ユリオは?」
「さあ。もう帰ったんじゃないかしら?今日はヤコフに大目玉だったし」
「今のユーリには、心身共に休息が必要だと思う。そっとしておこう」
そう言われて勇利は彼らの後に続こうとしたが、ふとその時視界にユーリと同年代の選手達の姿がよぎった。
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