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【YOI男主】僕のスーパーヒーロー【勇利&ユーリ】

第3章 不安と焦りとパンドラの匣


「ユーリ!身体の具合はいいのか?」
「午前中に寝たら治った」
ヤコフの質問に短く応えながら、ユーリはリンクサイドで練習の準備をする。
「今日は、お前の時間を他のヤツに当てる事にしたから、ワシが見れるのはそれからになるぞ」
「構わねえよ。俺のせいだし」
淡々と自主練に入ったユーリを見て、リンクから驚きと感心の視線が集中した。
「…驚きね、あのクソガキ全開だったユーリが。身体と一緒に心も大きくなったってヤツ?」
「オフのアイスショーを切欠に、確かにユーリは変わったな。しかし…それとは別に焦りも見えるのは、気のせいだろうか?」
「なまじっか昨シーズンが上手く行き過ぎたから、そのギャップに苦しんでるのかしら?成長期なんだから不調になるのは当然なのに」
「…いや、それだけではなさそうだ」
リンクメイトのミラ・バビチェヴァやギオルギー・ポポヴィッチが遠巻きに眺めているのも気づかず、ユーリは自分の大きくなった身体に馴染ませていくかのように反復練習を続ける。
徐々に身体が温まって来た所でジャンプの練習に入ったが、2回転まではどうにか着氷出来たものの、3回転になるとやはり得意のサルコウでバランスを崩し、ループ以降の高難易度ジャンプは、パンクやステップアウト等を繰り返していた。
(こんなの4回転どころじゃねえ…どうしちまったんだよ俺は!サルコウですら、どんな飛び方してたか判らなくなってきちまった…)
動きを止めて肩で息をしていると、リリアから「それ以上練習しても、何の役にも立たないわ」と休憩を命じられ、ユーリは仕方なくリンクを下りた。
すると、小休止を取っていた勇利とヴィクトルが声を掛けてきた。
「今朝は体調悪いって聞いてたけど、大丈夫なの?」
いつもと変わらぬ表情の勇利を見て、ユーリは数秒の沈黙の後で口を開く。
「サユリ、もうすぐ退院みたいじゃねぇかよ」
「うん、術後の経過も順調そうで…え?」
「…やっぱり。お前はサユリの手術の事、知ってたんだな。何で俺には黙ってたんだよ?」
僅かに荒らげられたユーリの語気に、勇利は困惑気味に眉を顰めた。
「そうやって、俺は蚊帳の外か?俺にはサユリを心配する資格はねぇってのか?」
「違うよ!純は、シーズン中のユリオに余計な負担かけたくないって…」
「でも、お前は…お前らは知ってたんじゃねぇかよ!」
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