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青色幻燈

第4章 鼠と年明け



「この鼠っておめ、ハー、何たる礼儀知らず!親の顔が見…」

「鍛冶町の宮澤商店に行きなさい。真面目なばかりで面白くも何ともない頭の硬い顔が見れるから。幾らでも見て来なさい」

「親不孝者」

む。この鼠め。

「見で来たらいいサ。親の顔コよ」

「おいどご(おれのことを)鍛冶町くんだり厄介払いする気だべ?」

「…いや、別に…」

「へ。図星だべ?そぉうはイカの金玉ぁ…」

「…あのなあ。オレは下の話は好かないんだ…」

「ここはタコが引っ張るだべや。チッ。全くインテリジェンスのねえ野郎コだ」

「この鼠はインテリジェンスの使い方を恐らく完全に履き違えていると思われる」

「お。慇懃無礼ってヤヅだが?」

「別に慇懃ではないぞ。今のはただの無礼」

「フンフン。ずげずげ言ってくんねが?新年早々やるねが、賢さんよぅ」

「巣穴に帰ってくれないか?それがオレの頭の中でも構わないから、取り敢えず目の前から消えて欲しい。正月を粛々を迎えたいんだ、オレは」

「迎えればいねが(いいじゃないか)」

「鼠が邪魔で出来ないと言っている」

「ふぅん?」

「ふぅんじゃない」

「へぇえ?」

「頭に来るな」

「お、何だ?やるが?やるってのが?」

「鼠と何をしろって言うんだ…」

「…相撲?」

「オレに聞ぐなでば…。いや、鼠と相撲なぞとれんよ?」

「ほぉん。バガにしてんだが?」

「いやいや。大体おめの何処を掴んで組むんだって話だべじゃ」

「そら腰よ」

「…何処らへんが腰なのだ?」

「んー…ここらへんだべかな?」

「はぁ…」

「気のね返事だな」

「ねがらな。気が」

「ねえ袖は触れねってが?キャキャキャ」

「猿みでな声で笑うんだなぁ。鼠なのに」

「なった声で笑ったっておいの勝手だ。さあ、け!揉んでやっがら!」

「そっためんけぐ(そんな可愛く)手を広げられても…」

「んん?バガにすんなよ?おいはつぇど!(強いぞ)」

「本人が言うからにはそうなんだろうなぁ」

「なんたるヤだくせ顔だごど。仏の賢さんが聞いて呆れらな」

だってもう、大概面倒くさい。

「見だばりでバガにすんでねぞ。おいなばまっことつぇ鼠なんだがらな」

「馬鹿になんぞさねさ。うん、きっとおめさんはつぇ鼠なんだべな」

「んだ。つぇ鼠だ」

「ツェねずみか。…ふ。ツェねずみ…」

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