第2章 柳生編(原作沿い)
妙様の料理は、お世辞にも上手とは
言えないものだった。
皿の上に乗せられた黒い謎の物体が
次々と並べられていく。
「おばば様のおかげでこんなに
卵料理のレパートリーが増えるなんて…」
いや、増えてないだろ、これ。
すべて同じ料理に見える。
いや、もはや料理というより
科学的実験を行ったダークマターの方が
近いだろう。
その烏滸がましい何かと変わって、
妙様の顔は笑顔だ………が、
逆にそれが、怖かった。
皿をすべて置ききった所で、
妙様が俺の方に振り返って聞く。
「澪さん、どうですか?味見してみます?」
「…悪いけど、忍者にとって
食事は敵に隙を与える時間なんだ………。」
「そうですか…残念です。」
ホッと一息をつく。
妙様の目がふとババアに向く。
「どうですか?おばば様。」
ババアはといえば、
煮えくり返るような顔をしている。
「…はぁ。」
俺は溜息をついて手で目を抑えた。
妙様に気付かれないように
ふわりと天井へ消える。
ゆっくりと天井の扉を閉めると、
ふぅ、とため息をついた。
どうやら逃げ切れたようで、
俺はホッとひと息をつくと、
背中から女の金切り声がした。
「どこいったんじゃ
あのニセ忍者野郎ぉぉお!!」
「………………」
俺はこの時、
女ってとっても怖いなぁと思いました。