第2章 柳生編(原作沿い)
妙様には失礼だが、前を少し通り、
若の耳元にこっそりと耳打ちする。
「若、侵入者が何名か屋敷内を
彷徨いてるけど、どうする?」
そう言うと、若が眉をひそめた。
「…誰だか検討はついているのかい?」
「何名かは、ね。
真選組の近藤局長、土方副長、
沖田一番隊隊長…
それから万事屋を名乗る2人組と
志村新八だ。
万事屋の2人がイマイチ身元が
分からないらしい。ごめんね。」
「新八君達ということか…分かった。
今どこに?」
「稽古場の方へ向かっている。
今東城達が昼食を取ってるから
ガチ合わなきゃいいけど…」
「すぐ、向かうよ。」
若によれば、志村新八という若い男は
かなり弱気な男で守られてばかりな
弱虫だと聞いていたから、
柳生家に道場破りに来るなんて思わなかった。
意外と度胸があるのか、
それともヤケクソかのどちらかだ。
「あの…九ちゃん?」
若と俺がコソコソ話していたのが
気になったのか妙様が不安そうな顔をする。
妙様には聞こえないように話したが、
これが知られれば妙様も
黙ってはいないだろうな。
何せ、大事な弟さんが
刀持って殴り込みに来ているのだから。
「ごめん、妙ちゃん。急用が出来た。
すぐ行かなくちゃならない。
澪、妙ちゃんに付いてくれないか。
彼女の言うことは、僕の命だと思っていいぞ」
妙様に声をかけ、俺に命する若。
内心焦っているのか、少し早口だ。
「九ちゃん…」
「ごめん、妙ちゃん。澪。頼んだよ。」
「承知。」
またもう1度若にお辞儀をすると若はそのまま
稽古部屋へと行ってしまった。
取り残された俺達2人。
気まずい雰囲気が流れる中、妙様が呟いた。
「あの…挨拶が終わったらおばば様に
会いに行けと言われているのですが…
どちらでしょうか?」
ああ、あのババアの所か。
あそこは男児禁制だから、行きづらいけど…
仕方がない。
「案内する。」
僕が頷いて歩き出すと、
妙様も俺のあとを追った。