第4章 再就職編
まぁ、ともかく。
怪しい依頼を無理に受ける必要は無い
ということだけは確かだ。
「……………あの、俺、やめときます。」
俺が書類を職員に返す。
すると、職員は笑って細くなっていた目が
急に見開く。眼球が、
今にも落ちそうなくらいに。
「えっ、えぇええぇええぇええ!!?」
「うぇえええぇええ!??」
びっくりして俺も思わず叫んでしまった。
一体なんなんだこの人!!
「えぇえ…絶対引き受けてくれると
思ったのに…」
冷や汗をダラダラかきながら苦笑する。
目は見開いたままで、なんだか不気味だ。
いや、不気味を超えた不気味だ。
「いやいやいや…無理ですよこんな依頼…
もの凄く怪しいし…。」
俺も冷や汗が額を伝った。
この人の不気味がうつってしまったようで、
俺の口角も上がり、へへ、と笑う。
それを見て、職員も笑った。
「絶対引き受けてくれると思って
履歴書送っちゃったのに
断られるのは困るよ…ふへへへっ」
「あぁ…それであんなに叫んで………
ってはぁぁ!??」
それを聞いて職員はまた笑ったが、
俺は冷や汗がダラダラたれて、口元が
ピクピク痙攣した。
「いやいやいやいやいやあの勝手に
履歴書送るとかどうかしてますよねそれ」
「だって!だって誰もこんな依頼受けないし
あの真選組の鬼土方十四郎に
睨まれてみろって!おじさん怖くてさぁ…
そのへんにあった君の履歴書を封筒に
突っ込んで渡しちゃった!」
「渡しちゃった!じゃないですよ…。」
テヘペロ、と舌を出す
中年のおじさんに殺意が湧く。
「あっ…その、申し訳ないとは思ってるよ。
君には迷惑かけていると思う。
でも、面接の日が近付いているのに
中々誰も依頼を受けてくれないなんて
言いにくくてさ。
会社のとしての信用もあるし…
だから、面接だけでも受けてきてくれない?
頼むよ、神崎君。」
おじさんは目の前でペコリと頭を下げた。
「………はぁ。」
俺は下げられた頭を見ながら、
1つ、ため息をついた。