第4章 再就職編
(澪視点)
「…………良かったな、澪。
父上に許してもらえて。」
俺の処分の通知も終わり、若と部屋を出る。
あんなに涙をだーだー流していたのに、
打って変わって今は笑顔だ。
「そうだね。」
俺の処分は御庭番長の辞職で終わった。
結局、破門は無しだ。
さらに、隠密としての勤務時間が変わり、
臨時職員となった。
つまり、必要なときだけ駆り出される、
派遣社員のようなもので、
それ以外の日は暇な上に無給だ。
結局、俺はほぼ無職になってしまったわけで
新しい就職先を探さなきゃなぁと
心の隅でそう思う。
ただ一つ、柳生家に居住する
ということだけは許されたため、
家がないわけではない。
御庭番長として天井裏に住み着いていた俺だが
すぐに俺の自室を用意するらしい。
天井裏にも飽き飽きしていたので
嬉しい事実だ。
「父上もあんなに憤怒していたのに…
やはり、父上は優しいのだな。」
「まぁ、輿矩様も若には甘いし…」
あんなけ泣いたら止められないよね、流石に。
俺も女を泣かしたら駄目って
先生に言われてるのもあって、
若に負けて、辞表取り下げちゃったわけだし。
「あ、そうだ、澪。これから暇か?」
九兵衛が僕の目を見て言う。
「空いてる…けど。」
「なら、久しぶりに遊びに行こう。
隠密長ではなくなったのだろう?」
「あ…うん。でも…俺ニートだよ。
それに、隠密の後輩達にも
報告に行きたいし…」
俺の言葉を聞き終わる前に、
若がにやりと笑う。
「そんなもの、後でもいいだろう。
では、出発だっ!」
若が、俺の手をギュッと掴む。
久しぶりに触れた若の手は、
女性のしなやかな手をしていた。
ああ、若は女の子だったなと思い出す。
「わっ、ちょ、若!!」
「まずは、甘味屋に行くぞ!」
悪戯っ子のように笑う若に
結局俺は負けてしまうのだった。