第23章 初心編
言い切ってから、ぐらぐらと視界が歪む。
これは毒じゃない。涙……だ。
嗚咽が込み上げてきて、膝を落とす。
周りの者は呆気にとられているのか黙ってしまった。
なんで、俺ばっかりこんな目に合うんだ。
俺はただ、神崎家に生まれただけなのに…
ただ、暗殺を学ばされただけなのに……
なんで、こんな目に合わなきゃいけないんだ。
俺も忍者なのに……
なんで嫌われなきゃいけないのか。
俺だって、ただの普通の明るい家庭に……
明るいところに家がある、
父親と母親がいる家に、生まれたかった………。
「いいよ、もう………俺が死ねばいいんだろ……。」
もう嫌だ。
神崎である自分が嫌だ。
ずっと溜め込んでいた感情がどっと溢れ出る。
それはぶくぶくと煮立つように黒く、
闇に染まっていた。
やっと………やっと、神崎でも
受け入れてもらえる場所が出来たのに…
俺の居場所は、簡単に壊れてしまった。
「…………もう疲れたんだ…。
服部だけ…逃がしてやってほしい。」
若達との楽しい思い出が浮かぶ。
ごめん。………みんな。俺、もう……
刀を自分に向ける。
もう、何もかも嫌になってしまった。
自分にも、周りにも。
せめて最期くらい、楽に………
「やめろ、神崎!」
服部が叫ぶ。
………煩いな…。
お前だって家族いるだろう。
俺みたいな、人殺しとは違って、
服部全蔵として、
真っ当な忍者になっているじゃないか。
……そんなお前に、俺の何がわかるんだよ。
「……じゃあね。服部。」