第23章 初心編
後ろで、ガタン、と物音がする。
入口のトラップに誰かが引っかかったようだ。
………つまり、侵入者だと考えるべきか。
「……そろそろ行かないと…。」
ここを明け渡すのはマズい。
隠したいわけじゃないが、
ここには、神崎家の今までの暗殺リストや、
依頼者の名前の書類が残っている。
依頼人が将軍家のものもある。
荒らされるのは勘弁して欲しい。
「奇遇だな。俺も今お暇しようと思ってたとこだ。」
俺がそう言うと、
服部もゆっくり立ち上がった。
「お前は裏口から帰れよ。一応部外者だし。」
「…………。」
服部に吐き捨てるように言い、
屋敷の出口に向かう。
だが、侵入してくる気配は少ない。
どうやら、
俺が外に出たところを迎え撃つつもりのようだ。
「んな事言っても、俺正面出口しか知らねーし。」
服部は俺の後ろに来て、肩をすくめた。
早く出ないのか、と言いたげだ。
……でも、今俺と一緒に外に出るのはマズい。
「じゃあ大人しく待ってて。…片付けてくる。」
俺がそう言って、歩き出すと、
服部が俺より前に躍り出る。
「待ってられるほど、俺の気は長くねぇよ。」
服部は、何が何でも、
俺に口を出すつもりらしい。
その様子は昔の服部の姿が重なった。
頑固で、1度言ったら聞かない………昔からだ。
「……はぁ………何言われても知らないよ、俺。」
「望むところだ。」