第23章 初心編
「ーーーーッ神崎!!!!」
そう言われて、我に返る。
俺は服部に馬乗りになって、
刀を首に突きつけていた。
1歩遅かったら、
俺は服部の首を落としていただろう。
「……ッはぁ、はぁ……」
俺は自然と息が上がっていた。
ーーー、無心だった。
服部とどのくらいやり合っていたのだろうか。
ふと周りを見ると至る所に
クナイや手裏剣が散らばっている。
「はぁ…俺の負けだ。」
服部がため息を吐きながら、そう言った。
息が上がっているのは服部も同じらしい。
肩を上下させながら、
両手を上げてヒラヒラと振った。
「……ふぅー………。」
俺が息を整えるために深く息を吐くと、
服部が苦笑いした。
「手負いって聞いてたから、
腕でも斬られたのかと思ってたんだが…
案外大丈夫じゃねぇか。安心した。」
「服部……。」
「んな怒んなよ。
お前が殺られちゃ、胸糞悪いんだよ。こっちは。」
服部は軽く笑った。
殺気はもう感じなくて、
また元の服部に戻っている。
「……俺を試したってこと?」
「ああ、まぁな。
俺に負けるようじゃ、多勢の忍者には勝てない。
ここで攫って匿ってやろうと思ったのは本当だ。」
「………お人好し……。」
「はっ…否定はしないぜ。」
服部の顔に嘘は感じられなかった。
俺は忍者刀を仕舞い、懐に納めた。
「……ねぇ。」
「ん?」
「なんで……俺を助けてくれるの?」
昔から思っていたことだ。
忍者の中で、俺と知り合いだなんて言うと、
敬遠されるだろうに、
服部は堂々とそれを公言している。
周りからの冷ややかな目と共に……
「………………へっ、ばーか。
んなもんに理由なんかいるかよ。」
服部はヘラヘラと笑った。
茶化しているつもりなのだろうか。
何か、理由があるはずだ。
危険を冒してでも…俺に味方をする理由が。
「………友達だから?」
思い当たる節はこれしかない。
俺がそう言うと、服部の口角が少し下がる。
「……そうかも、な。」