第23章 初心編
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『澪。何をしているのですか。』
『何って……人を殺してる。』
『何故ですか?』
『だって………こいつ、ムカつくから。』
ぼくがそう言って首を折り、
目の前の男の息の根を止める。
先生はぼくの首根っこを掴み、思い切り頬を叩いた。
『ーーーッた。』
『澪。気に入らないからという
理由だけで人を殺めてはいけません。』
『でも、先生。
こいつ、ぼくの家のこと、散々悪く言うんだ。
神崎家は頭がおかしいって…。
ぼくは何もおかしくないのに。酷いよ。』
その男は記者だった。
懐を見ると、酷い記事ばかりが出てくる。
全部、ぼくの家のことの記事だ。
『それでも、殺めてはいけないのです。』
『なんでよ。こんな奴ら…黙ってられない。』
僕は懐にあるものを全て出してから、
近くの川へ男を落とす。
男はゴロゴロと転がって川へと沈んでいった。
『でも、殺してしまったら、
酷い事をしているのと同じことです。
その記事が、本当になってしまいますよ。』
『…………。』
ぼくが目を落とすと、
先生は記事を全て拾い、ちらりと目を通して
ビリビリに破いてしまった。
『澪。』
『…………はい。』
『いつか、分かってくれる人が現れます。
その人を大切にしていれば、
そんな記事、嘘っぱちだと
きっと分かってくれますよ。』
私のように。
と、先生は笑って、ぼくの腫れた頬を撫でた。
『だから、腹が立った時は、
言葉にすれば良いのです。
手を出す必要はありません。』
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