第4章 再就職編
グラグラと目の前に居る澪が涙で歪む。
そして、その目から滴る雫は
僕の頬を伝い、畳へと落ちていく。
ぽたぽたと音をたてて。
澪が僕の方を向く。
僕の顔は涙でぐしゃぐしゃで、
見れたものじゃない。
なのに、澪は僕の顔を凝視した。
まんまるの茶色い瞳が僕を写していた。
「澪……グスッ…僕、
僕には澪が必要なんだ……
今まで上司面してきてごめん。
澪は僕よりも強くて、年上なのに…」
澪は黙って僕の言葉を聞いていた。
父上もおじい様も、ついてきた東城も。
「…僕は最初、君が来た時
友達が出来たと思った。」
澪が初めて運ばれてきた時、
最初、僕と同じお侍さんの女の子だと思った
そのくらい、澪は綺麗だったから。
勿論、怪我はしてたし、血まみれだったしで
ちょっと怖かったけど…肌がとっても白くて、
綺麗だったんだ。
でも、違った。
その後すぐ男の子だって分かった。
澪の髪は長かったから男に見えなかった。
その事でよく門下生にからかわれていたけど、
そんなこと何も気にしずに
自分を貫き通す澪に憧れた。
仲良くなりたいって純粋にそう思ったんだ。
「けれど、いつの間にか…
そのことを僕は忘れてしまっていた。」
澪の怪我が治って、御庭番をするように
なってから僕と澪との関係は変わった。
所謂上司と部下という関係だ。
澪は調査の一貫として出ていくことも多くなり
澪が家でのんびりしていることは
なくなっていった。
その中でも、僕達は友人でいようと
一緒にこっそり遊びに行ったりした。
でも、それも何年経つと消えてしまい、
お互い敬語抜きで話すという事しか
僕達の関係は薄くなっていた。
でも、今気付いたんだ。
澪の事をどう思っているか。
「………もう1度、澪が良ければ、
僕の友達になってほしい。
僕の初めての、男友達に。」
涙でボロボロになりながら、
なんとか澪にそう伝えた。