第23章 初心編
「…………盗み聞き…してました。
その、ほんの出来心で…すみません。」
とりあえず縁側に座った副長にお茶と灰皿を出して
俺も隣に正座した。
「………フン。」
副長は鼻で笑って、煙草に火を付けている。
その間、副長は俺の方は一切見ようとしなかった。
「あの…いつから知ってたんですか?俺の事。」
黙っている副長の顔を覗き込んで聞くと、
副長が目線だけをこちらに向けた。
「……………たまたま、道場で見かけただけだ。」
「……そう……でしたか。」
そうか…。手の震えを止めようとしているのを、
見られていたのか。
今思えば自分の事に必死になっていて、
周りが見えていなかった気がする。
………もう少し気を付けなきゃな。
「………でも、大丈夫です。
すぐ、治りますから。このくらい。」
俺は自分に言い聞かせるようにそう言った。
副長と30cmほど距離をとっている俺の右手は
全く震えていない。
そう、すぐ治る。すぐ治るさ。
「………………。」
俺がそう言うと、副長が俺に手を伸ばした。
「…………ッ、」
副長の手が俺の腹部へと伸びた。
無意識に、顔がこわばる。
副長の手は大きく開き、
俺のベルトを掴もうとしていた。
『ねぇ、澪…続き、する?』
脳裏で副長の手が……アイツの手と、重なる…………