第22章 帰宅編
「山崎。闇市を調べるのは、
そんなに危ねェもんなのか?」
「闇市…ですか?なんのために?」
「いいから答えろ。」
俺がイラついてそう言うと、
山崎は首を傾げて言った。
「危なくないと言ったら嘘になります。
あそこには海賊や浪士が
うじゃうじゃいますから。」
「浪士ってのは…攘夷志士か?」
「さぁ……。いるとは思いますが、
出入りしているのが誰かまではわからないですね。
闇市といえど、薬やら何やら、色々売ってますから。
ネットワーク広いんですよ、意外と。」
「………へぇ。」
吸い終わった煙草を灰皿に押し付けて、
もう一本取り出す。
「じゃ、人身売買にも奴等は絡んでんのか?」
「人身売買?」
山崎が目を白黒させる。
……なんだよ。そんなに珍しいのか。
「…そんなの、今はほとんど無いですよ。
まさか副長、興味あるんですか?」
「んなわけあるか。」
「……はぁ。そうなんですか?」
疑うような眼差しを向ける山崎を
殴ろうかどうか悩んでいると、
山崎が思い出したように口を開いた。
「………あ、でも聞いたことはありますよ。
人身売買の闇市。
天人が人間の女を買ってるって噂で。」
「へぇ、何処に?」
「さぁ、場所までは…。
でも相手は天人です。
人間が行ったら追い出されちゃいますよ。」
「それを無理矢理入るのがお前らの仕事だろうが。」
「まぁそうなんですけど…。」
山崎はあんまり乗り気では無いらしく、
顎に手をあてて考えている。
「天人しかいないってことは
攘夷志士は関係ないと思うんですが…。
そんな調査、やっても良いんですか?」