第22章 帰宅編
「…あ"あ"………体が重い…そして………眠い……。」
結局当日に仕事は終わらすことができるわけもなく。
夜通し仕事をして、
1度家に帰ろうと思ったのは翌々日だった。
ふらふらと屯所の廊下を歩いていると
副長が縁側でタバコを吸っていた。
「……………オイ。」
「……はい、なんでしょうか。」
副長に睨まれて、足を止めた。
頭の中では既に天使が舞っている。
『パトラッシュ…僕はもう疲れたよ…』
と言わんばかりの眠気だ。
「お前、今まで何してやがった。」
副長の言葉に少しだけ目が覚める。
真選組に全てを話したら、
俺の首は間違いなく飛ぶ。…勿論、物理的に。
「…………………。」
「言えねぇってのか。」
俺の顔をちらりと見てから、
副長は煙を吐いた。
「それとも、
テメェの家の都合で姿を消してたのか?」
「………………、え?」
副長のその言葉の意味を理解するのに数秒かかった
何故、俺の家の事を知っているんだろう。
将軍に就いていた頃の書類にも、
攘夷志士時代の書類にも俺の名前は一切無いはずだ。
それどころか、
この世の中に『神崎家』に纏わる資料は
もう無いはず。
それなのに、どうして?
「柳生のジジイに聞いた。
恨むなら、自分の当主を恨むんだな。」
「……………敏木斎様…。」
敏木斎様、話したのか。
俺が目を伏せると、
副長がタバコの灰を灰皿に落とす。
「ま、…俺はテメェの家の事なら
それはそれで構わねェ。」
「………………。」
「だが、お前の経歴上、
それを鵜呑みにするわけにはいかねぇ。」
副長の言いたい事はよく分かる。
俺は元攘夷志士だ。
元攘夷志士が、突然姿を消して、
何事もなく戻ってきたのなら、
疑うべきは攘夷志士との繋がりである。