第22章 帰宅編
(九兵衛視点)
「……………澪。」
今日で澪がいなくなって丸2ヶ月。
後悔は山ほどあるが、
それも時と共に流れていってしまった。
今は、ただ澪に会いたかった。
「全く。主人を2ヶ月も放ったらかしにして………。
貴様は従者失格だぞ、澪。」
空に向かってそう言ってやった。
澪が、げ、と言っている顔が目に浮かぶ。
「げ……そんなに怒らないでよ。若。」
ふふ、幻聴まで聞こえてきてしまった。
でも、許してやるもんか。
たまにはお灸を据えろ、馬鹿者。
「怒るに決まっているさ。
もし帰ってきたら、許さないからな。」
「………じゃあ、」
びゅう、と秋風が吹いて枯葉が舞う。
それと同時に、林の間から紺の着流しが見えた。
「………………どうしたら、許してくれる?」
「…………………ッ、」
思わず目が霞んだ。
その声も姿も、幻聴ではなかった。
溜まりに溜まった感情が
ボロボロと溢れ出す。
「………あっ……若…。」
慌てて駆け寄ってくる彼は、本物だ。
本物の、澪だ。