第22章 帰宅編
隠密隊は俺がいない間も
しっかりやっていたのだろう。
中では、いつものように
門下生の声と竹刀の音が聞こえる。
流石俺が作った部隊…なんて、自惚れる。
「敏木斎様、いるか?」
「はい。今道場にいらっしゃいます。」
「そうか、ありがとう。」
「………いえ。」
俺がお礼を言うと、隠密隊は首を振った。
「…お体は…大丈夫なのですか?
少し…お痩せになったようですが。」
「ああ。……ま、色々あって。」
神威の所でだいぶ制限されてたしな…。
晋助に色々食べさせられて、
ちょっとはマシになったはずなんだけど、
…前のように元通り…とはいかなかったみたいだ。
俺が笑って誤魔化すと、隠密隊が一歩前に出る。
「…あの……澪さん。」
「ん?」
「…あまり、無理をなさらないでください。
…もし澪さんが帰って来なかったら…
俺達は…どうすれば…いいか……。」
元はと言えば俺が、
戦争で家族を失い身寄りがなくなった
少年達で作った隠密隊。
最初は戦争に参加していた者としての、
単純な罪滅ぼしのつもりだったのだが、
忍者や隠密としてのいろはを教えるうちに、
いつの間にか、信頼関係が生まれていた。
彼らは俺の事を本当の兄のように
慕ってくれている。
「俺は…貴方に拾ってもらった恩を
忘れた事はありません。
貴方に拾ってもらった命。
澪さんのためなら、死ぬ覚悟です。
だから……」
隠密隊がそう言った途中で、頭をコツンと小突いた。
「馬鹿。俺達は柳生家を護るためにあるんだ。
俺なんかに命を掛けてる場合か。」
「………でも。」
「それに、なんのためにお前らに
教えてきたと思ってる。
俺がいなくても、護れるようにするためだろ。」
「……………。」
俺がそう言うと、隠密隊は口を閉じた。
確かに、俺がいなくなった後も、
仕事中にどう対応したらいいか分からない、と
電話がかかってくることは何度かあった。
俺も心配だったから特別な行事の際は
行う前にあれこれ指示していたのも事実。
はぁ………俺も少し甘やかしすぎたかな。