第22章 帰宅編
(澪視点)
「銀時、ありがとう。送ってくれて。」
「…ったく、世話焼かせやがって。」
銀時が柳生家の前で背を向ける。
「……………あ。」
「なに?」
銀時が途中で振り返った。
ひょい、と何かが投げられて、
俺は反射的にそれを受け取った。
「それ、大事なモンだろ。ちゃんと持っとけ。」
渡されたのは、いつも持ち歩いている忍者刀と、
先生の教科書。
川に濡れて真っ白になっていたはずの教科書に
俺の血が滲んで、
酷い色になってしまっていた。
「………ありがとう。なくしたかと思ってた。」
「次はねーぞ。」
「分かってるよ。」
銀時は俺が晋助の所にいたのを
凄く悔やんでいたみたいで、
ここに来るまでにもうするな、と
何度も念を押された。
「じゃ、また落ち着いたら顔出すよ。」
「へいへい。」
銀時が片手を軽く振って、
また柳生家前の階段を降りていった。
「…………………俺も行かないと。」
俺も銀時に背を向けた。
結局、なんて言おうか…という言い訳はノープラン。
勿論本当の事は言うつもりないけど。
俺が全部話したら、神楽が傷つくだろうから。
それに、俺は銀時の弟として神威に捕まった。
それに銀時が良い顔するはずがないと思って、
あの二人にも話さなかった。
これは、俺と神威の問題だから。
「………すーはー…すーはー………よし。」
俺は深呼吸をしてから、
久しぶりに柳生家の門をくぐった。
「…えっと、……た、ただ…いまー……。」
ストン、と屋根から隠密隊が俺の前に現れる。
彼はいつものように俺に跪いて、顔を上げる。
「……………。」
彼は目を丸くして固まっている。
丸くしすぎて、目玉が落ちそうだ。
「………澪……さん?」
「ああ…その、ただいま。」
「……本当に、澪さん…ですか?」
「ああ……帰るの遅くなって、悪かった。」
「……………ッ、…そう…ですか…。良かった………。」
彼は涙を堪えて拳をぎゅう、と握っていた。