第21章 鬼兵隊編
「…今のアイツを…抱けるってんなら、
そりゃあ悪魔ってもんだ。」
「………どういう意味だ。」
そして、俺もそうだ。
澪が海賊に怯え、
俺に泣きついてきた時。
『怖かった』って泣いて震えていた時。
俺は全てを投げ出してもいいと思った。
それまでは、
俺を忘れていた間、
俺がお前をどんな思いでいたか、
どんなに我慢していたか、
全部全部、思い知らせてやる。
そう思っていた。
でも、澪が泣いているのを見たら、
俺の想いなんてどうでも良くなっちまって。
澪の涙を拭いてやりたくて。
澪に笑って欲しくて。
痩せ細って、穢れて、傷ついて……。
それに苦しんでる澪を
助けてやりたかった。
……これを人間は、惚れた弱み、
とでも言うのだろうか。
「俺は悪魔じゃなかったってことだ。」
「………はぁ?」
ヅラが首を傾げる。
だが、俺は結局、澪と共に居たのに
澪の笑顔を見ることは1度も出来なかった。
万斎もまた子も追い払って、
俺は澪と居続けた。
でも、澪は笑わなかった。
毎日海を見て、ぼんやりとしているだけ。
俺がどんなに優しく接してやっても、
無理だと悟った。
だから、澪を江戸に返すと決めたのだ。
澪には、俺じゃない、
誰かが必要だったから。
「……とにかく、触れてねェモンは触れてねェ。」
俺がそう言うと、
ヅラはへの字口をしたまま頷いた。
納得はしてもらえなかったようだ。