第21章 鬼兵隊編
後日談
(高杉視点)
「……………おい。」
澪がいなくなった翌日。
京を宛もなくふらついてると
傘を被った男に声をかけられた。
傘から見える長髪に、俺も足を止めた。
「……ヅラ。」
「ヅラじゃない桂だ。」
いつも通りの返しを聞きつつ周りを見渡すが、
他の人間の様子は見えない。
「あの二人は先に江戸に帰らせた。
俺と共に行動すると、厄介な事になるからな。
銀時がいれば、問題なかろう。」
「…………。」
少々期待していた気持ちがまた下っていく。
昨日別れを決意したばかりの決心は
もう既に揺らいでいた。
「………澪に聞いたぞ。
一切、手を出さなかったそうだな。」
「………あァ。」
結局、添い寝とキスは毎日してやったくらいで、
それ以降は何もしなかった。
添い寝する度に手を出したい欲望を抑えて、
夜中にトイレに駆け込んだ事は誰にも言うまい。
「俺はとっくに食われていたと思っていたが。」
「……もし俺が食っていたら?」
「貴様を八つ裂きにする予定だったさ。」
「ククッ……物騒なこったァ。」
俺はそう笑ってみせるが、ヅラは本気だったらしい。
傘を片手で上げて、俺の表情を伺っている。
「…嘘をついているようなら、今のうちだぞ。」
ヅラは俺を酷く疑っていた。
澪が俺を庇っていると
踏んでいるのかもしれない。
「…………ククッ」
その言葉に、俺は笑いが込み上げた。
澪が銀時とヅラに抱きついた時、
全てを察した。
俺ら3人とも、アイツに持っていかれてるって。
自分の立場も、危険も、何もかもを投げ捨てても
アイツを護っていたい。
その言葉の裏腹にある想いを俺はよく知っていた。
………ヅラも銀時も
昔はそうじゃなかったのによォ。
恋敵が知らぬ間に増えていたとは…とんだ誤算だ。