第21章 鬼兵隊編
(澪視点)
「……あ、おかえり晋助。」
「あァ。」
晋助が部屋に戻って来た。
外の会議室で、会議を行っていたらしい。
部屋から出ないように言われている俺は
窓からぼんやりと外を見ていた。
いつ見ても、海は青くて、遠い。
既に晋助に助けられてから、3週間が経過していた。
晋助が俺の隣に座る。
俺の少しだけ伸びた髪を触る。
肩につくかつかないかくらいまでに
切ってしまった髪が気に入らないらしい。
この間、髪をはやく伸ばせ、
なんて無理難題を言われてしまった。
「澪。」
「なに?」
「………来週、京に降りる。」
「…………京?」
江戸からは遠いが、一旦日本に降りるつもりらしい。
そろそろ物資の補給が必要なのかもしれない。
「………てめェも、そこで降りろ。」
「……………え…。」
そう言われて、現実が俺に戻って来た。
皆の所へ戻りたい、会いたいと思っていたのは事実。
だが、いざ戻るとなると、少し恐ろしくなった。
血みどろだった現場。
置いていった柳生家。
放ったらかしの真選組の仕事。
それに、旧友の銀時、小太郎。
皆になんて説明すればいい?
口から出すにも恐ろしい思い出を、
色んな人に話さなければならないのだろうか。
自分が、海賊に攫われてしまったことを。
口淫を許してしまったことを。
男に抱かれそうになってしまったことを。
それを知られて、また俺は、
敬遠されてしまうのだろうか。
気持ち悪い、穢れたって、思われてしまう。
自分自身、今回の事件で穢れたと思っているから、
きっと皆もそう感じるに違いない。
「…いいな?」
「………………。」
その言葉に素直に頷けない自分がいた。
ただ、怖かった。皆に会うのが。
でも、この日が来るのは分かっていた。
それが今、目の前にやってきただけの事だ。
俺はごくりと唾を飲み込む。
期限は来週。それまでに、
どう話すか考えておけばいいだけの事。
「………わか、た。」
俺が途切れ途切れの返事をすると、
晋助も納得したように俺の頭を撫でた。