第21章 鬼兵隊編
「…………出てけ。」
気分が悪くなり、万斎を睨むと、
万斎は悪気が無さそうに首を傾げて見せた。
「その曇り…貴様自身の体を狂わせぬかもしれんな。
狂い、蝕み…いずれ、使い物にならなくなる。」
「………テメェ……殺されてェのか。」
「そんなに怒るな、晋助。顔を見に来ただけだ。」
一応、顔見知りなのでな、と付け加えて
万斎は部屋を出ていった。
障子が閉まる音がすると、
澪はホッと肩の荷を下ろした。
「………………澪。」
「…………なに?」
「……気にすんな。」
「……………。」
俺は、いや俺だけは、
澪がここに来るまでの
経緯を全て聞いていた。
澪が何をされたのか、
どうしてこうなってしまったのか。
『晋助が助けてくれなかったら…今頃…』
そう呟いた時の澪の顔は真っ青だった。
戦争中も今も、
こういうことは想定していたはずなのだが、
実際にそういう目に会うと、どう対応して良いか
分からなくなる。
「……………うん、分かった。」
今の澪は男に対し、
恐怖を抱いているようだ。
………そりゃそうか。
軽く1ヶ月は監禁状態だったから。
何かしらの後遺症(トラウマ)が
残っていてもおかしくない。
「…………澪。」
「………、う。」
ほら、今だって。
近づいて髪に触れると、
澪はびくりと肩を震わせた。
「怖いか?」
「……………ううん。」
嘘つけ、泣きそうな顔してる癖に。
「………来い。」
俺が呼ぶと、澪が少し不安そうに
俺の膝元へ寄ってくる。
いや、澪を怖がらせたのは、
海賊だけじゃない。
澪が真選組に入ると知って、
裏切られた気分で澪を呼び出し、
襲いかけたのは………俺自身。
海賊共に澪を傷つけた事に怒りを感じつつも
俺も同じ事をしてしまったという後悔が頭を過る。
もしあの時に銀時が割り込んでこなかったら、
自分は澪に何をしていただろう。
そう思うと、俺も海賊共と同類だ。
酷い旧友だ、俺は。
いや、
もう旧友とも思われてないかもしれない。