第21章 鬼兵隊編
「…………で、将軍様に殺されかけた澪は
幕府に対して反感を持ち、攘夷志士に
なったっつー話か?」
「そこまでは分からぬ。
澪はここに住み始めてもうすぐ10年だが、
幕府に対する反感は無い。…賛成の意も無いがな。
…だが、澪に忍者のいろはを教えたのが
神崎家とするなら、
侍のいろはを教えた者がいるはずじゃ。
それが、たまたま攘夷志士だった…
そう考えることは出来る。」
隣で総悟がむすりとへの字口をする。
「……話は分かりやした。
ただ、澪を探さねェ理由にはなりやせんぜ」
「…おじい様、僕も同感だ。
今の話が、澪を探さない理由なのか?」
九兵衛も首を傾げる。
「こんなに澪と関わった人間が
多数おっても、ワシが今言った事を
知る者は1人もおらんかった。…つまり、じゃ。」
「…………ワシらには知らない、
澪の顔があるのじゃろう。」
「……澪の裏の顔…って事か。」
「澪は将軍に仕えていた一族。
ワシらに何か隠して過ごしていたとしても
おかしくはないということじゃ。」
「ですが、敏木斎様。
澪は柳生家に来て
もうすぐ10年になるんですよ。
その澪が、隠し事なんて………。」
東城の言葉に、俺が口を開く。
「隠密は、自分が隠密だということを
実の家族にもバラさないらしいな。」
「…………!」
「そういうことだろ?」
俺がそう言うと、敏木斎は俯いた。
「………手紙が届いた以上、澪は生きている。
だからこそ、無闇矢鱈に首を突っ込むでない。」
「澪には、澪の事情がある。
ワシらが首を突っ込んで
なんとかなる問題ではないのじゃ。」
敏木斎は皆の顔を見渡す。
「…………分かったかの?」
もう誰も、反論するものはいなかった。