第21章 鬼兵隊編
すまんって、どういう意味だ?
俺がその疑問を口を出す前に
敏木斎が口を開いた。
「………おぬしらは、澪自身の事を
調べた事があるかの?」
「なんだよ、藪から棒に……。」
「澪の手がかり、知りたいんじゃ
無かったのかの?」
「……………。」
近藤さんは足を止めて振り返る。
敏木斎は何か俺達に話があるらしい。
近藤さんはその場に座りながら
首を振った。
「俺は澪の身元なんざ、調べた事ねぇぞ?」
…近藤さんは、迷わずそう言い切った。
近藤さんは誰でも構わず信じきって
すぐに受け入れちまう。
俺も隣に座って煙草に火をつけた。
だが、俺は、そうじゃない。
「…調べはしたが、何も出てこなかった。」
「……トシ?」
「どこで生まれ、何をしていたかも分からねぇ。
攘夷志士だった証拠すらない。
あるのは俺達がアイツを面接した時の履歴書と、
お宅らが作った戸籍だけだ。」
「……トシ、お前…澪の事…。」
「信頼してねェわけじゃねぇよ。
ただ…気になっただけだ。
奴がどうして攘夷志士だったかをな。」
ため息混じりに煙草の煙を吐いた。
齋藤に調査をさせた後も、
俺は独自で澪を調べていた。
だが、不思議なことに
澪の情報はほとんど無かった。
戸籍も柳生家に入ってから作られた物だったから
なんの手がかりにもならなかった。
……書類だけじゃない。
どれだけ探しても、昔の澪と
関わっていた人物はあの銀髪以外は
見つからなかった。
澪は桂や高杉と顔見知りと
言っていたが、奴等が澪のことを
話すわけがなく、
情報は手薄。
誰も、澪が昔どこで
生まれ育ったのかすら知らないのだ。
「まぁ、理由どころか、澪は
身元不明って言ってもおかしくなかったが。」
「…………………。」
土方がそう言うと、敏木斎が腕を組んだ。
「………身元、か。」
「…アンタこそ、何か知ってるんだろ?」
俺はハッタリをかけてそう言うと
敏木斎は頷いた。
「…ああ…少し、だけだが。」
「…………へぇ?」
俺の言葉に、
敏木斎が口を開いた。