第3章 過去編
「…ならいいのだがな。
気を付けろよ。奴は指名手配犯なんだぞ。」
「何言ってんの。
小太郎だってテロリストじゃん。それに、
俺は幼馴染の晋助に会ってるだけだから、
指名手配犯だろうがなんだろうが
関係ないよ。」
「はぁ………澪も相変わらずだな。」
何を言っても無駄と思ったのかヅラは
澪から目をそらし、肩を落とした。
こういう所は澪の悪い所だ。
澪は誰も疑おうとしない。
きっと高杉が澪に刀を向けようと
首をかしげて笑うだけだろう。
勿論、誰でもすぐに心を開き
仲良くなれるのは澪の良いところでも
あるのだが、見ているこちらは
危なっかしくて見ていられない。
だから、いつも俺達で澪を護っていた。
澪を騙すような野郎は近付かせなかったし
極力俺達の側を離れさせないようにしていた。
これからも、そうしていけばいい。
俺は、澪を護っていたい。
「まぁ、何があったら俺かヅラが
奪い返してやればいいだけだろ。
高杉も今のところ澪には
手を出せねぇみたいだしよ」
悪夢が蘇る。
『預かり物を返却する。』
という手紙とともに送られてきたのは、
血濡れた澪の愛刀。
澪が愛刀を簡単に手放すとは考えられない。
持ち手にも血が付いている所を
見ると、考えられるのはひとつだった。
澪の死である。
……その時の絶望は今も忘れないし、
忘れられない。
また澪を失うのは御免だ。
俺の言葉に、ヅラも渋々頷いた。