第21章 鬼兵隊編
「……うぃ………飲みすぎた……おえっ…あ、
揺れてる…地面が揺れてる…地震だ地震…。」
「そりゃあテメェ、船の上に地震も
クソもねェだろォが………ヒック、馬鹿がァ。」
晋助がぐらりと俺の肩を掴んだまま項垂れる。
晋助と、俺のどちらの酒が強いかと
言われれば、僅差で晋助の方が強いと
言うべきだろう。
ただ、その晋助も今日は
ベロベロに酔ったようで
ぐらりぐらりと頭が揺れている。
表情は、見えない。
夕飯で酒を寄越せと晋助が言い、
美味そうな焼酎を寄越してきた。
俺は、病人だからと医者から酒は
止められていたのだけど、
晋助が一杯くらいいいだろ、と
また薬の時のように口移しで飲まされてから、
あんまり記憶が無い。
久しぶりの酒と、アルコールの高い焼酎は
俺の体を火照させるのに十分だった。
そんなこんなで、つまみを手に焼酎を
がぶ飲みして、一興。
一升瓶が空になったところで、
晋助が机に突っ伏した。
「しんすけぇ……ダメだってねちゃあ…。
かぜひくかもしれないぞぉ………ヒック。」
一応着物を掴んで引っ張ってみるが、
動かない。
このまま寝てしまったのだろうか。
「……しんすけー……おふとんに…いくよー…。」
晋助をずるずると引き摺って、
布団に寝かせる。
酔っ払いに、一人の男を動かすには
力がいるわけで。
俺は、ゼーハー言いながら、
晋助を布団の中に放り込んだ。
「…はぁ…はぁ…。やべ、吐きそ…。」
フラフラと窓を開けて、外の風に当たる。
外は涼しくて、風がひゅうと
俺の中に舞い込んだ。
「……………あ、あれ、江戸かなぁ。」
水平線の手前に、小さな陸が見える。
砂浜があって、ビルがあって、森があって。
「………………わかぁ、ぎんときぃ、みんなぁ。」
呂律の回らない俺の情けない声が、
海にこだまする。
「…………とどくわけ、ないか。」
その時、俺の足元にコン、と
冷たいものが当たる。
「………?」
さっき2人で空にした、酒瓶だ。
「ん……………蓋付き。」
律儀に蓋も閉められているそれは、
しっかり密閉されている。