第3章 過去編
「けどよー、外出てから
何年も経ってんじゃねーか。
その間に会いにこれただろ、普通に。」
「いや、この話にはまだ続きがあるんだ。
外出可能になってから初めての先生の命日。
先生に…会いに行った時のことだ。」
ーーーーーーーーー…………………
「………先生。久しぶり。
俺、今…生きてるよ……」
1人でそう呟き、ぼんやりと空を見上げると、
空で先生が笑っているような気がする。
不思議と笑みが零れた。
太陽に教科書をすかせると
パラパラと風でページが捲れる。
中身はあの日川に落ちてから
ほとんど読めなくなってしまった。
今は、俺の血が滲んでいるだけだけど、
それでも、これは俺の心の支えだ。
「はは、先生。教科書こんなんにして
怒ってるのかな…。」
怒り顔の先生が思い浮かぶ。
あの日の事は、悲しくて、辛い記憶だ。
でも、立ち止まってはいられない。
俺も前に進まなきゃ。
「…澪?」
後ろから誰かの声がする。
振り返ると、
懐かしいの幼馴染がそこにいた。
「晋…助………?久しぶり!」
「…本当に澪なのか?
死んだ…ハズ、じゃ……」
晋助は心底驚いているようで
片目である右目を見開いた。
「生きてるよ。俺。
訳あって…生き残ったみたい。」
「澪………!!!!」
晋助は俺に飛びつき、思い切り抱き締めた。
「よか………った…………っ…」
晋助はいつの間にか泣いていて、
俺は背中を優しくさすってやった。
「もう晋助。俺、年下なんだけど?」
「だって…馬鹿。お前、今まで、
何してたんだよ…生きてんなら、
ちゃんと、そう言えって言ってんだろォが…」
晋助は泣きながらグズグズと鼻をすすった。
まぁ、俺は皆が生きてることは知ってたけど
皆は俺の事知らないもんね。
仕方ないか。
俺は晋助が落ち着くまで
待ってやることにした。