第20章 春雨編 (注:R18 本番なし)
「山の麓ォ?ここか?」
柳生家の近くの山。
山道と階段を上ると、
見知った顔が見えた。
「………あ、旦那!」
「ん?ああ、お前…………。」
真選組制服と、黒髪。
どこにでもいそうなその顔。
銀さんが少しだけ黙って、
ああ、と思い出す。
「……………ジミーか。」
「山崎ですよ!…もう、
大分待たせた上にそれですか。」
がっくし、と肩を落とした後、
山崎さんが顔だけこちらに上げる。
「旦那も澪を探しに来たんですか?
…残念ですが、手がかりはゼロですよ。」
山崎さんの近くまで階段を上ると、
むわり、と血の臭いがする。
「手がかりっつーかよ、
澪はここで何してやがったんだ。」
「俺も知りませんよ……って、
ちょっと旦那!!」
銀さんもその臭いに気付いたようで
顔つきが真剣になった。
山崎さんを押しのけて現場に入ると、
先程感じた血の臭いが充満した現場へと
足を踏み入れた。
「…………っおえ、」
思わず口を抑える。
気分は最悪だ。
床は血だらけ、折れた刀も
真選組制服の上着も、
何もかも血にまみれている。
「銀ちゃん…澪が
最後にいた場所って……ココアルか?」
神楽ちゃんが目を真ん丸にして見ている。
「…………………そうだな。」
銀さんは不思議なくらいに冷静だった。
血溜まりの奥に行き、
草陰に捨てられた澪さんの
私物を漁る。
「……こんなの、まるで………
澪が死んだみたいアル……。」
神楽ちゃんが悲しそうに呟いた。
「……九兵衛さんに…なんて言おう……。」
僕が呟くと、
山崎さんが口を開いた。
「……あの子には伝えないって、
柳生家の当主さん達が言ってたよ。
きっと、澪が消えた、
くらいしか伝えられてないだろうね。」
「……………そうですか…。」
確かに九兵衛さんは
澪がいなくなった、としか
言っていなかった。
こんな、大怪我を負ったんじゃないかって
聞いたら、九兵衛さん、
飛び出してしまいそうだし。